本のかたちを考える ― その2 ページって何? 「ページ」と本のかたちとの関係

前回は、「ページという言葉は紙の本のページを指す」としました。しかし、現在は、Webページという言葉も広く使われています。また、リフロー型EPUBやKindleなどの電子書籍でもページという言葉を使うことがあります。そこで、今回は「ページ」という言葉をもう少し根源に遡って考えてみます。

日本語の「ページ」

「ページ」は、明治の時代に洋装本の出版物の広告などに登場した外来語です。『言葉に関する問答集 総集編』(文化庁編集、2015年11月16日版、全国官報販売協同組合発行)のpp. 476~477によると「ページ」という言葉が日本で使われ始めた時期については、次のように書かれています。

  • createヘボンの『和英語林集成』の初版・再版は「ページ」の見出しがなく、明治19年刊の第三版に至って「PEIJIペイジ」が登場した。
  • create明治22年1月の『言海』の予約募集に「紙数、概算一千ページ」とある。
  • create新聞広告でも明治21年の書物の広告で「ページ」という言葉が使われている。
  • create明治22年から明治31年刊行の国語辞典の見出しには「ページ」という言葉はない。
  • create明治41年刊の『ことばの泉 補遺』には見出しに「ぺえじ」とあり、以降、見出しは「ページ」になり、現在まで辞書の見出しに「ページ」が出ている。

これから見ますと、「ページ」という言葉は、明治20年頃から出版界で書籍の宣伝(ページ数など)で使われはじめ、明治40年頃迄に辞書の見出し語になる程度まで普及したようです。

ちなみに、『新しきことばの泉』(小林花眠著、博進館、大正10年)p.1163には次のようにあります。

見出し語:ページ、Page(英)
説明:頁。書籍・帳簿などの紙の片面。頁刷(ページずり)といふは活版で、棒組を一定の框に入れて、頁に刷り得るようにしたもの。頁附(ページづけ)といふは、ページ数を記しつけること。これを丁附(ちやうづけ)ともいふ。

国立国会図書館デジタルコレクション『新しきことばの泉』

「頁」と「ページ」

『言葉に関する問答集 総集編』は、「ページ」を「頁」と表記することについて、次のように説明しています。

  • create『言海』の内容見本明治24年のものには、「洋装大本紙数一千二百五十頁」として、「ページ」が「頁」に変わっている。
  • create他の書物も明治21年のものは「ページ」が使ってあり、明治23年以降は「頁」が圧倒的に多い。
  • create昭和21年内閣告示の「当用漢字表」、昭和56年内閣告示の「常用漢字表」には「頁」がない。従って、国語施策に従うときは、「頁」ではなく、「ページ」を使う。
  • create実際は現在でも書物の広告や内容見本には広く「頁」が使われている。

「頁」という文字をあてた理由は定説がないのですが、葉と中国語の発音が似ていたからという説が「新明解漢和辞典」に紹介されています。

「ページ」は英語のPageを表す言葉として使われ始め、その後、漢字の「頁」があてられて広く使われるようになったという経過です。このことから、それまで日本は「ページ」に相当する概念はなかったのだろうと推測できます。

英語のPage

英語のPageという言葉(以下、ページと表記します)がいつからどのように使われ始めたかは分かりません。Wikipediaでは、西洋の古い文書の形式として、コデックス(冊子状)とスクロール(巻物状)が紹介されています。そして、いずれの説明でもページという言葉が適用されています。コデックスのページは現在の洋装本(洋本)のページと似ています。一方、スクロールは羊皮紙・パピルスのシートをのりで貼ったり、端を糸で縫って左右につなげたものですが、スクロールでは1シートをパネルまたはページと読んでいます。

Scroll(Wikipedia)
A scroll is usually divided up into pages, which are sometimes separate sheets of papyrus or parchment glued together at the edges, or may be marked divisions of a continuous roll of writing material.

Wikipediaにでているスクロールでは、ページは次の図のようになっています。

Wikipediaにでているスクロール

スクロールには左右に巻き取る芯があります。シートを横に繫げてあります。文章は巻物の上に文字を横書きで書きます。行は上から下に進みますので、シートがページとなり、ページ単位に文章が区切られます。

英語のページは、文書の装丁が冊子形式であるか、巻物形式であるかという、かたちとは独立した概念のようです。

日本にページの概念がなかった理由を考える

日本にページに相当する概念がなかった理由は、次のように考えられます。

日本の巻物形式の文書も横スクロールですが、そこに縦書きすると次の図のように行が左から右に行が進みます。ですのでページの区切りは必要ありません。

巻物のスクロールと縦書きはスクロールと行の進行方向は一致する。

江戸時代は大量の冊子形式の和本が出版されていたようですが、和本は1枚の和紙の片面に木版刷りあるいは手書きで書き(写本)、それを二つに折って綴じていた。そのため洋装本のように紙をシートとして裏表を使うという発想がなかった。ちなみに、次の写真は、古本屋で購入(1冊200円)した和本(奥付には、安政4年(1857年)となっています)をバラした1枚の和紙の表と裏です。

和本の1丁の表
巻物の1丁の裏

和紙は薄いので文字が裏まで透けてしまいます。しかし、160年前の和紙が虫に食われているところを除けばあまり劣化していないのは驚きです。

『和本のすすめ』(中野三敏、岩波新書、2011年)によると江戸の本では、この1枚を「丁」というそうです。右は丁のオ、左は丁のウと言い、一ノオ、一ノウという風に数えていくそうです。

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